宮女・詠月は、のぞきが趣味の壺オタク。
「やっぱり、この焼きしまった白磁の、透きとおるような白は最高ね」
この日も壺を愛でるついでに、養い親から教わった「壺中術」で、高貴な人々の織りなす人間模様を覗いていた。
「どうせお偉い方々にとって、身分の低い宮女なんて、道端の石ころみたいなもの。同じ人間とは思っていないから、なにを見られても気にならないでしょ」
まず覗いたのは、病気が篤いと噂の
女皇陛下の居室。老いた女皇のまわりでは、寵臣たちがおのれの行く末に不安を感じて右往左往している。
「このクズ男が、もうすぐ失脚するなら万々歳ね♪」
次に壺中の景色を寝殿の外へと向けると、女皇陛下の愛娘である太平公主の輿が、木々に身を潜ませるようにして停まっている。秘事の匂いにのぞき見根性を刺激された詠月は、そっとその様子を覗こうとし……。
詠月
女皇陛下の寝宮である迎仙宮に仕える宮女。
のぞきが趣味の壺オタク。
壺中術でのぞきを楽しんでいる最中に隆基に手をつかまれ、迎仙宮の外へと落ちてしまう。
女皇の体調を隠そうとする寵臣・張兄弟によって門が閉ざされた迎仙宮に戻ろうとするが、消えた母の行方を探す隆基に振り回されているうちに、宮中に巣食う魔の存在を知ることに――。
隆基
女皇の孫で、臨淄郡王。
方術オタクで、行き当たりばったりの性格
叔母である太平公主に頼まれ、宮城内に逃がしてしまった猫を捜索しているときに、壺中術でその場を覗いていた詠月を引き寄せてしまう。
詠月を利用して迎仙宮のなかへと忍び込み、幼いころに行方を断った母を探そうとしているうちに、女皇が骨壺に隠し持っていた髑髏を見つける。
中国の唐時代、史上唯一の女性皇帝である武則天(則天武后)が退位することになる「神龍革命」を舞台にしたファンタジーとなっています。
実は「神龍革命」「唐隆の変」「先天の変」という怒涛のように続いた政変を3部作で書いていきたいと考えていたのですが、続きはどうなるかな~
とりあえず今違うものを執筆してしまっているので・・・
まあでも、かなり経ってからひょっこり続きが書けることもあると今回思ったので、諦めずにいようかな。